日本で過小評価にも程があるニュートラル・ミルク・ホテルの名盤【名盤ナビ】

日本で過小評価にも程があるニュートラル・ミルク・ホテルの名盤

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『In the Aeroplane Over the Sea』Neutral Milk Hotel(1998年)

Neutral Milk Hotel(ニュートラル・ミルク・ホテル)というアメリカのバンドをご存知でしょうか。世界的に熱狂的なファンを持ち、多くのアーティストに影響を与えながらも、歴史に残る名盤『In the Aeroplane Over the Sea(イン・ザ・エアロプレーン・オーバー・ザ・シー)』(1998年)を発表後、すぐに解散してしまったインディー・ロック・バンドです(2013~2015に一時的に再結成)。

名盤と言える理由

私がこのバンドを知ったのは、名盤紹介サイト「Best Ever Albums」で名だたる名盤が並ぶ中、18 位という高順位にこの作品を見つけたことがきっかけでした。それから Youtube でいくつかの曲を聴き、すぐに心酔するに至りました。なんで気が付かなかったのか後悔するほど、本当に素晴らしいアルバムです。しかしこの作品、なぜか日本での知名度が非常に低いのです。Amazon.co.jp のレビューは 5 件しかありません (Amazon.com では 600 件以上のレビューが付いています)。このサイトを開設した理由の 1 つは、この名盤の素晴らしさを日本でも広めるためです。

音楽性

ニュートラル・ミルク・ホテルの音楽は、1960 年代のポップ・ミュージックに影響を受けており、インディー・ロック、Lo-Fi、フォーク・パンク、サイケデリック・フォークなどとも形容されます。これらのジャンルからは、広く受け入れられる音楽ではないという印象を持つかもしれません。しかし、米国のインディー・ロックを代表するこの名盤は、当初売れなかったものの、ピッチフォークなどの音楽メディアで高い評価を受けたことで注目を集め、今では多くの世界的アーティストや音楽メディアに認められるまでになっています。その事例を以下に紹介します。

  • 現代を代表するロック・バンドとなった Arcade Fire(アーケイド・ファイア)の中心人物ウィン・バトラーが Merge Records というレーベルと契約した主な理由は、この作品があるがためだそうです。別のバンド・メンバーのリチャード・パリーも、この作品を史上最高のレコードの 1 つに挙げています。
  • Franz Ferdinand(フランツ・フェルディナンド )のアレックスとボブも大ファンで、ボブは 2 年間車でこれしか聴いていなかったというほどの熱愛ぶりです。
  • NME 誌の「The 500 Greatest Albums Of All Time」では 3 位、ピッチフォークの「Highest Rated Albums of All Time」では 10 位にランクインしています。
  • 1999 年には R.E.M. のサポートを依頼されています。ただし、バンドの中心人物ジェフ・マンガムがツアーや音楽プレスにストレスを感じてノイローゼになっていたため断っています。

この作品の魅力はうまく説明できませんが、幻想的でノスタルジックな世界観、演劇のような展開と緩急のある構成、ときに優しくときに暑苦しいほどエモーショナルな男(漢)らしいボーカル、変則的だがなぜか心に残るメロディがクセになります。決してオシャレな音ではありませんが、芝居っぽさや過剰さが鼻に付くこともなく、すべての音がストレートに違和感なく心に響きます。また、不思議なことに、どんな気分のときに聴いても受け入れることができる懐の深さもあります。

抽象的な歌詞もまた魅力です。「Holland, 1945」の歌詞を見ると、どうやらジェフ・マンガムは、『アンネの日記』を読んでアンネ・フランクに恋をした後、アンネがナチスの迫害にあって命を落としたことを知ったようです。どこまで本当なのかつかみどころがない話ですが、この作品には、それが本当だと思えるリアルさがあります。エネルギッシュなのにどこか感傷的な雰囲気があるのは、こうした影響なのでしょう。ボブ・ディランのような詩的センスも感じられます。

興味を持っていただけたら、まずは曲名で検索して聴いてみてください。全曲素晴らしいのですが、おすすめを挙げるなら以下のとおりです。

トラック#1「The King Of Carrot Flowers Part 1」:力強いリズムを刻むアコギの演奏から始まる最初のトラックです。

トラック#3「In The Aeroplane Over The Sea」:派手さはないものの一番高い評価を受けている、叙情的なタイトル曲です。


トラック#4「Two-Headed Boy」:イントロから最後まで聴きどころ満載の 1 曲です。

トラック#6「Holland, 1945」:アルバムのハイライトとなるアップビートな曲です。

一聴して少しでも引っかかるところがあれば、おそらくお気に入りの一枚になることでしょう。

ちなみに、バンドのファースト・アルバム『On Avery Island』は、名盤ランキング 789 位となっています。ファンには聴く価値がありますが、『In the Aeroplane Over the Sea』ほど普遍的に受け入れられる音楽ではないため、まずはセカンド・アルバムから聴くことをお勧めします。