デヴィッド・ボウイについて誤解していた5つの側面

デヴィッド・ボウイの存在は昔からなんとなく意識していましたが、長年、きちんと聴いたことはありませんでした。
私が当時抱いていたイメージから、距離をとったほうが良い気がしたからです。本能的に。
しかし、2013年頃から興味をもって過去作を聴き込んだり、過去のインタビューを読んだりするうちに、それまでのイメージが偏見に過ぎなかったことに気づかされました。

私のデビッド・ボウイの印象といえば、こんな感じでした。

  • 派手なビジュアルのロックスター
  • ナチスを好むカルト的危険人物
  • 薬物中毒の遊び人
  • 実はパートナーの方がすごい
  • 音楽性に一貫のない流されやすい人

あくまで私の過去の勝手な印象ですが、ロクなイメージではないので、避けていた理由はわかっていただけるでしょうか。

でも、現在の印象はまったく異なります。
なぜそういう印象を持ってしまったのか、その捉え方がどう変化したのかを書いてみたいと思います。

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派手なビジュアルのロックスター?

デヴィッド・ボウイで一番有名なのは、グラム・ロック時代であり、ジギー・スターダストのイメージです。
山本寛斎デザインのド派手な衣装と化粧でロックスター然としたデヴィッド・ボウイのイメージは強烈です。


アラジン・セイン<2013リマスター>

ビジュアル系バンドなどに良い印象を持っていなかった私は正直、距離を感じました。。

でも、後から知ったのは、この姿はコンセプトに基づく架空の姿であり、素のデヴィッド・ボウイの姿ではないということです。
有名になるために試行錯誤した結果、キャラクターを立てて演じたほうがうまく行くことに気づいたのでしょう。
デヴィッド・ボウイが特別なのは、ただ有名になることが最終目標ではなかったことです。
有名になって富と名声を得ることは、自分が表現したいものを自由にできるようになるための手段に過ぎなかったのではないかと思います。
なぜなら、人気絶頂期の1973年、「ジギー・スターダスト」を演じることをすっぱりと辞めているからです。

アルバム『ジギー・スターダスト』は一般的に一番人気の高い作品であり、素晴らしい完成された作品だと思いますが、私は心酔するほど好きではありません。ただ、アルバムだけにとどまらず架空の姿を演じ切って活動していたことに対しては、凄みを感じざるを得ません。

ナチスを好むカルト的危険人物?

Wikipedia などを読むと、デヴィッド・ボウイはヒトラーを擁護する発言をするなど、危険人物的な言動をとっていたことが書かれています。
カルト・スターとも書かれていることから、極右的なヤバい思想の持ち主なのではないか、と勘繰ってしまいます。

ところが、薬物依存の強かった一時期はともかく、ボウイの生涯の言動を知ると、実はまったくそうではないことに気づきます。

さまざまな音楽を取り入れていること。
さまざまな政治的立場のミュージシャンからリスペクトされていること。
チベット仏教の僧侶になろうとしたり、日本文化を研究したり、ソマリア出身の女性と結婚したりといったことからも、偏見にとらわれない人柄がうかがい知れます。

その時々に傾倒していたことの影響で問題発言をすることはありますが、基本的に非常に開かれたマインドを持ち、さまざまなことに興味を持って熱心に取り組み、己を高めていっていたのではないでしょうか。

偉大なミュージシャンのなかには、政治色が強く、私としては賛同できない活動をしている人はけっこういます。
が、ボウイに関しては、浅はかな考えやファッションでそうした活動をしていたと思うような点は見つかりません。新しいことに挑戦するばかりでなく、思慮深く賢い人という印象です。

薬物中毒の遊び人?

ピエール瀧が逮捕された時にコカインを摂取していた有名人の例としてボウイの名前が挙がっていたように、ボウイが薬物の影響を受けていたことは有名です。
「これはコカインの副作用ではない!」と歌っている曲さえあります(「ステイション・トゥ・ステイション」、名曲)。

海外の有名人にはよくあることですが、薬物と無縁な世界に住む私としては距離を感じるところです。

しかし、ボウイ自身も薬物依存が良くないことはわかっており、後年には依存症を克服しています。
それだけでなく、後年にはナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナーの薬物依存症の克服を助けていたことも知られています。

性に関しても、本当にバイセクシャルかどうかはさておき奔放なイメージです。ただ、そういう時代ももちろんありましたが、イマンと再婚してからは一途に幸せな結婚生活を送っていたと言われています。

間違いを犯すことがあっても、そこから立ち直り、家族を大切にしてしっかりと生きていくという年齢の重ね方には、本当に憧れます。

と同時に、社会のほうも日本のように一度間違いを犯した人を徹底的に叩き潰すのではなく、過去は過去として支援していけるようになっていけたらいいのにな、と思います。

実はパートナーの方がすごい?

デヴィッド・ボウイは時代ごとにパートナーを変えて作品をつくっており、みな素晴らしいミュージシャンばかりです。
スターダスト時代にはミック・ロンソン、ベルリン時代にはブライアン・イーノと組んでいたことは有名です。「ヒーローズ」ではキング・クリムゾンのロバート・フリップが参加し、レッツ・ダンスではナイル・ロジャースと組んでいました。ほかにも挙げきれないほど多数の優れたミュージシャンが作品を彩っています。

これをもって「ボウイはパートナーに恵まれただけ」とうがった見方をする人もいるようですが、それは違うと思います。みなデヴィッド・ボウイと共に制作することを望むほどの魅力があったということだし、みなボウイと組んだ作品でその才能を遺憾なく発揮していると思えるからです。

ボウイは参加ミュージシャンの才能を引き出す天才でもあったのでしょう。細かく指示して縛り付けるのではなく、構想を伝え自由度を与えて素晴らしい作品を作り上げる方法は、芸術においてはもちろん、チームで何かを成し遂げる方法としても参考になるのではないでしょうか。

音楽性に一貫のない流されやすい人

デヴィッド・ボウイは時代ごと、アルバムごとにサウンドをガラッと変えることでも有名です。
フォークっぽい初期を経てグラム・ロックの時代があり、その後ブラックミュージックに傾倒したと思ったらアート・ロックの方向に進み、「レッツ・ダンス」でポップ・スターとして返り咲くなど、時代ごとに違った顔を見せます。

このためカメレオンのような捉えどころのない人という印象を受けますが、その音楽を聴いてわかるのは、どの時代もただ流行に流され飲み込まれているのではないということです。
時代に影響を受けつつも、丸パクリするのではなく、いつもその本質をとらえて自分の音楽にうまく取り込み、最終的にオリジナリティあふれる作品をつくっていることがわかります。
いつ聴いても古臭くなることがないのは、どれもオリジナリティがあり、本気でつくられた作品だからこそと思います。

晩年までどの時代にもシーンに大きな影響を与えるような名曲、名盤を残していることは、驚きとしか言いようがありません。

しかしながら、問題もあります。
どの時代にも名盤を残しているがため、デヴィッド・ボウイに興味をもった人が何から聴くべきかが難しいのです。

一番有名な『ジギー・スターダスト』も良いですが、これが好みに合わなかったからといってボウイから遠ざかるのはもったいないことと強く思います。この作品に現れていない側面に魅力を感じる人も多いと思うので。

好きな作品はボウイ・ファンの中でも分かれており、一枚だけお勧めを挙げるとしても、本当に人それぞれです。

私は評判の高いアルバムを古い順に聴いていき、現在10枚くらい入手したところですが、特にお気に入りのアルバムは『ハンキー・ドリー』、『ステイション・トゥ・ステイション』、『ロウ』あたりです。
そのほか、心に深く残る曲が、だいたいどのアルバムにも1曲以上あります。

ただ、ここまで来るのに8年くらいかかっており、幸せな時間でしたが、同じ聴き方はお勧めできません。

そこでお勧めなのは、まずは全時代を網羅したベスト・アルバムを聴き、そこで気に入った時代のアルバムを入手することです。

ボウイのベスト・アルバムは複数出ていますが、このアルバムはなかでも幅広く選曲されているので入門にお勧めです。
もちろん、ボウイの魅力を1作品に完全に収めることなどできるわけがないので、これだけでは不十分ですが。

デヴィッド・ボウイといえば、ビートたけしや坂本龍一とともに出演している映画『戦場のメリークリスマス』もお勧めです。映画の音楽は坂本龍一ですが、これもまた名曲です。
Amazon Prime 会員なら無料で観られます(投稿時点での状況であり、変更される可能性があります)。同じくプライム会員特典に含まれているBBCのドキュメンタリー『デヴィッド・ボウイ-最初の5年間』『デヴィッド・ボウイ-最後の5年間』も興味深い作品でお勧めです。

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